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●書誌情報
「アラブの春」と音楽
若者たちの愛国とプロテスト
中町信孝
ISBN:9784907583781
判型:四六
製本:並製
頁数:320ページ
発売日:2016/02/05
重版:2刷
●内容紹介
「アラブの春」とはいったい何だったのか――。アラブ世界のポピュラー音楽を分析することで、二〇世紀後半から現在にいたるアラブの若者文化と、革命の真意が見えてくる。
SEALDsなど、新しいデモの形が日本でも広まる中で書き下ろされた、アラブ世界ポップカルチャー研究の第一人者による渾身の一冊!
2011年、アラブ世界の若者たちは自由を求める「革命」を起こし、その一環としてエジプトではムバラク独裁政権が倒された。
しかし2013年、エジプト初の文民大統領であるモルシー政権が軍による「クーデター」によって倒されると、若者たちの多くは軍部主導の新体制を支持した。
このような、一見すると独裁への逆行、民主主義の後退ともみえるエジプトの社会情勢は、なぜ生じたのだろうか。革命の背景やその後の推移について、政治的・経済的な要因から説明する試みはずいぶんとなされている。
しかし、現地で「若者(シャバーブ)革命」と呼ばれるこの動きを真に理解しようとするならば、革命を支えたアラブ世界の「若者(シャバーブ)」たちが何を考え、何を求めているかを知るべきだろう。
本書は、筆者が長年定点観測を続けてきたアラブ世界のポピュラー音楽の分析により、20世紀後半から現在にいたるアラブの若者文化の歴史をたどることで、彼らにとってこの革命とは何だったのかを解明する。
それとともに、現代国際社会を理解する鍵となる中東情勢を、音楽という切り口から分かりやすく解説するものである。
<目次>
はじめに アラブの春、イスラーム、エジプト
タハリール広場の「自由の声」
イスラームは音楽が嫌い?
エジプト方言で歌うポップス
第一章 エジプト現代史とポピュラー音楽
1-1 ナセル時代――アラブ伝統歌謡「タラブ」の誕生
タハリールを三度埋め尽くしたエジプト民衆
「東洋の星」ウンム・クルスーム
ウンム・クルスームの革命歌
「褐色の夜鳴き鳥」アブドゥルハリーム・ハーフェズ
ハーフェズの愛国歌
1-2 サダトからムバーラクへ――カセットテープが生んだエジポップ
ナセル後の路線転換
ナイトクラブから飛び出したシャアビー
「エル・ギール」の時代
テレビ時代の大スター、アムル・ディヤーブ
「ライオン」と「キング」
1-3 ゼロ年代――シャバービー(若者音楽)の発展
歌手もビジュアルを競う時代?
セクシー歌手の濫立
若者音楽の革命? ロマンスィー路線
若者音楽の歌詞世界
ロマンスィー路線に見る新たな歌詞世界
第二章 愛国化するエジポップ
2-1 アラブ主義的メッセージソング
五十年目の「アラブの夢」
アクサー・インティファーダの応援歌
庶民派プロテスト歌手、シャアバーン・アブドゥッラヒーム
イラク、そしてレバノン
さらに十年後の「アラブの良心」
2-2 愛国主義的メッセージソング
アラブの複合的アイデンティティー
アイドルが歌う愛国
エジプト愛国ソングに描かれるテーマ
愛国ソングにおける若者へのメッセージ
ムバーラク体制のプロパガンダ
2-3 イスラーム主義的メッセージソングと宗教共存
若者向けのイスラーム
愛国ソングの中の宗教共存
宗派紛争と「ひとつの手」
第三章 二〇一一年エジプト革命と音楽
3-1 革命の起こり――反逆するミュージシャンたち
アラブ世界の「プロテスト」とアイデンティティー
アラブ世界のプロテストソング
「ジャスミン革命」とプロテストソング
政府批判はユーチューブで
3-2 革命の推移――タハリールの内と外
シュプレヒコールがロックに
若者たちへの批判と応援歌
若者と政府、メッセージソングの応酬
「自由の声が呼んでいる」
3-3 革命の成就――若者を賛美する楽曲
犠牲者への追悼と癒やし
「みそぎ」のための愛国ソング
台頭する革命派のミュージシャンたち
第四章 革命後のエジプトと音楽
4-1 革命はどこへ向かうのか?
ポジティブ・シンキングな時代
若者たちは何を求めるのか?
再びタハリール広場へ
革命は続く
議会選挙と大統領選挙
4-2 変わりゆくエジポップ
ロック時代の幕開け
女性ボーカリストの登場
マハラガナートとイスラームポップス
4-3 これは革命か? それともクーデターか?
同胞団嫌悪と「反乱」運動
軍を支持する人気歌手たち
これは革命か? クーデターか?
愛「軍」ソングの登場
口を閉ざすミュージシャンたち
終章 「アラブの春」が残したもの
アラブ世界の音楽を変えた「アラブの春」
チュニジア
パレスチナ
シリア、レバノン
ヨルダン
サウジアラビア
変わらないエジポップ?
エジプトの「ひとつの手」と日本の「絆」
あとがき
デザイン:高橋力(m.b.llc)
●著者紹介
中町信孝(甲南大学文学部教授)
1972年生まれ、石川県金沢市出身。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。専門は中世アラブの文化史。2000年から2002年のエジプト留学でアラブ音楽の魅力に開眼し、以来当地のポピュラーカルチャーを定点観測している。著書に『アラブ・ミュージック――その深遠なる魅力に迫る』(東京堂出版、2008年、共著)、『イスラーム 書物の歴史』(名古屋大学出版会、2014年、共著)など。